親から子へ、孫へ時代の記憶を受け継ぐ邸宅

エリア:福岡市中央区
大きな窓辺に腰掛ける

「ここを全部開けるとね。また趣が変わっていいんですよ。」
そう言って家主様はリビングの窓をするすると全開にしてくれました。
心地よい風がすーっと室内に滑り込みます。
枠が無くなった窓は、庭の緑を映し出す1枚の大きなスクリーンのようです。

家主様ご夫妻が現在の家を建てる前、この土地にはご主人の実家が建っていました。
「築50年は経っていたでしょうか。前の家が建てられたときは、戦後からわずか数年っていう頃で。山から運ばれてきた何本もの巨木をこの庭で大勢の大工さんたちが木挽きして、それはもう賑やかな現場だったそうです。」

設計は家主様のご友人の女性設計士

新しい家の設計は家主様のご友人である女性設計士の方。
取り壊す前の家と当時家主様が住んでいた家に泊まり込みながら、間取りを考えてくださったそうです。

広々リビング

のびやかなリビング・ダイニング。自然光を取り入れるため天井に確保されたトップライト。
使いやすい水まわりや家事室。
家に宿る記憶と暮らしやすさに配慮された設計を受け、施工は弊社桑野組にご依頼いただきました。

実は何十年も前、巨木を切り出して前の家を建てたのも弊社なのです。

家主様からはこんなうれしいお言葉をいただきました。

「長いお付き合いですし、何より前の家のことも良くご存じですからね。安心してお任せしました」。

前の家に使っていた建材も多く使用

繊細な造りの雪見障子や、流れるような木目が美しい若杉の窓枠や松の床材、独特の歪みを持つ大きなガラス窓など…丁寧に解体し、洗いをかけて再び組み立てることによって、美しい持ち味がよみがえった素材たち。

それは、時代に流されない深みと気品にあふれた貴重な財産です。

高級素材で作られていた旧宅の窓枠や天井板などは、すべて磨きをかけたうえで新宅に活用しました。

和室
新しい健具

雰囲気に合わせて新しい建具も作りました。

天井の杉板
障子枠

天井の杉板や障子枠にも旧宅の建材が生かされています。
細かく均一に揃った木目が美しいです。

私の好きな場所

前の家の面影

新しい柱には小さな鉛筆の跡。
これは家主様のお孫さんたちの背丈を測ったしるしです。

「家のあちらこちらに前の家と似たような面影があり、最初からとても馴染みの良い住まいでした。」

入居当初を振り返り、家主様はそう言って微笑んでくれました。

新築から数年が経過した今、庭の草木は豊かさを増し、家の柱には小さなお孫さんたちの成長の記録がいくつも刻まれています。

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